月に降る雨と懺悔
あとがき

 最後までお付き合いいただきありがとうございました。
 この話は、ラストに記載しましたとおり、「雨月物語」の影響を受けています。影響って言うか、オマージュ? というか。学生の時に、国文の何かの科目で(忘れてしもた)「雨月物語」を勉強しているときに「青頭巾」に出会い、その時にはじめてこう、食人というものをまともに読みまして、なんかすごく衝撃を受け、これを自分なりに書き直してみたいなあと思ったのがきっかけです。よくよく考えたら、ファンタジーで鬼とか魔物とか出てくると「人間を襲う」とか「食う」とかって珍しくもない気がするので、マンガとかで結構触れてきたはずなんですが。
 「青頭巾」がどういう話かは、ちょっと検索するとすぐ出てくるんですが、簡単にあらすじを。
 とあるお坊さんがある村を訪れると、人々が「鬼」と彼を恐れる。どうしたのかと聞くと、村の上の山に寺があり、徳の高い院主がいたが、隣国に行った際にお稚児さんを連れて帰り寵愛していた。そのお稚児さんが病で死んでしまう。それを悲しんだ院主は嘆き悲しみ稚児を葬ることもできずにいたが、やがてその肉を喰らいつくしてしまい、そのうち村の人間を襲うようになったらしい。
 お坊さんはそれを聞いて院主に会いに行き、「江月照松風吹 永夜清宵何所為」この言葉の意味を考えるように告げ、自分がかぶっていた青頭巾を渡した。そして一年後お坊さんがまた寺を訪れると、人のようなものがとぎれとぎれにその言葉を唱え続けていた。「作麼生何所為そもさんなんのしょいぞ」と頭を撃つと、それは跡形もなく消え去った。
 ……という話です。
 ものすごくかいつまみました。
 これを自分風に書き直すにあたって、まず明治だな、と思っていて。土葬じゃないといけないというのもあるんですが、言わずもがな、新しいものだったり古いものだったり、明るいものや暗いものが混じりあう時代が魅力でした。そこはもう考えるまでもなく決まっていたんですが、お坊さんをどうするか迷いました。坊さんを出すか、違うものにするか。で、自作から蓮と奏がちょうどいい位置にいたので、ゲスト的な感じで出てもらおう、と思ったんですが……彼らがしゃべりだすとすごく空気が軽くなるので、それがすごく困りました。

 この話は、何度か挑戦しながらも、自分が作品に対してイメージするよりも自分の文体が軽すぎると感じたり、取り組む姿勢が甘いと感じたり、さまざまに挫折してなかなか書きあげることができずにおりましたが、ようやっと2,3年前に自分的に満足のいく出来のものができました。……が、指摘を受けたことで、この作品に打ち込むあまり、そして自分の文章に対する過信のせいで、結果的にとても読みにくいものが出来上がってしまったと気付きました。
 どうすることもできないまま結構な時間がたってしまいましたが、そのおかげでかなり客観的な視点を持つことができたのではないかと思います。
今回の掲載に当たり、冒頭を書きなおし、全体の文章もかなり削って書きなおしたんですが、どうでしょうか……。読み直すたびに、まだぎこちないところがあると感じられる部分もあったりはするので(たぶんそれは延々とそうなんでしょうけど)、最後まで掲載し終わったことだし、ちょこちょこまた手を入れていきたいなあと思います。

なんだか自作について長々語っちゃってすみません。
そんなこんなで、本当に最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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それでは。

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