エターナル・ナイト・ストーリー

SHIO

 もどかしく剥がした蝋引きの包みの中身は、色褪せたノートの束だった。
 見た目は普通の方眼ノート。その普通の見た目に隠された秘密を俺は知っている。
 それはかつて一人の孤独な少年の運命を変え、また一人の少女の世界を揺さぶり、最後にはすべての夢と希望を道連れに燃え尽きたはずの秘密だった。
 あり得ないものを前に震える指で、擦り切れた表紙をそっと開く。果たして秘密は記憶のままに確かにそこに記されていた。



<エターナル・ナイト・ストーリー>



【第一章】
「おお、あなたこそ伝説の勇者……この常夜の国に危機迫るとき現れるという、『常夜の騎士』に違いない!」
「つまりなにか危機的状況なんですか」
「いえ、平和そのものです」
「……なにかの間違いでは」
「いやいや今ここに伝説の通り異世界の若者が! 絶対そうですやったよ母ちゃん、オレ伝説の勇者さまに会えたよー!」
「絶対なんかの間違いだー!」



【第二章】
「スライムと同レベルのボクのお守りなんて聞いてませんよ。まあ、お代はきちんと頂戴してますから結構ですけど」
 あれほどいたスライムを一撃で消し飛ばした少女は、三角帽子をかぶり直すと、思わずどきりとするほど美しい微笑みを浮かべました。
「私はルーン。あなたには、ルーン様と呼ぶことを許します」