あくまのコントン

古戸マチコ

 きっと世界は滅びるのだ。
 だって、火山めっちゃ噴火してるし。ゴジラみたいな謎の化け物が暴れてるし。
 少なくとも私は死ぬ。もう死んだ、と三回くらい思ったけど、まだギリギリ生きてるみたい。倒れ伏した今はもう、痛いのとか熱いのとか全部わかんなくなってて、赤い空と焼け跡の広がる大地をぽかんと眺めているだけで、呼吸がどんどん減っていく。
 少し前まで阿鼻叫喚でうるさかった周りの人たちも、みんな私と同じ状態なのか、それともみんな先に逝ってしまったのか、気配もしなくなっている。
 ああ、なんだか楽だな。体も心も、諦めに浸されて動く気もない。このまま、尽きるように死んじゃうんだ。
 ……そう思っていたら、真っ赤な視界のはじっこに、黒いものがぴょこんと覗いた。
「イキテル?」
 え。……いやまあ、ギリ生きてますけど。
 こんな状態でも自分のまぶたが丸くなろうとしたのがわかる。霞んでいた目を凝らす。だけどその「ぴょこん」の形はよく見えない。
 黒いモヤモヤをぎゅっと集めて、真っ白な点を二つ、うねうね動く波線を一本引いたシンプルな顔だ。何、なんかのゆるキャラ?
 拳大のそれは私を覗き込んで言った。
「チョト、スマセン。イマ、オジカン、イデスカ?」
 ……良くないです。
「ソッカァ」
 しゅん、としたのが点のような目の些細な動きだけでわかる。というか、口にしてないのに伝わった? 私は喉をやられて喋れないのに。
「コントン、テレパスィデキル。テステス、テステス……」
 いやテステスしてる時間もあんまりなさそうだけど。
 でもなるほど、テレパシーか。確かにこの子の口らしきところは波打つだけで開かないし、たどたどしい、子どものような声は頭の中に直接響く。
 喋り方のニュアンスからして、コントンというのがこの子の名前なのかな。
 と、考えた途端に、点のような目が少し広がって、ぱああっと嬉しそうな顔になった。
「ソデス! コントン、あくま。コントン、たましいタベル」
 あ、悪魔……? もしかして、この天変地異も謎の怪獣も、悪魔のしわざってこと?
 するとコントンは全身を横に振った。
「チャウネン」
 なぜ関西弁。